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「はい。ユウスケくん、よくできました」
国語の時間。生徒のひとりの男の子がそこまで読み上げると、教室に拍手が沸き起こった。物語は地球を侵略しに来た宇宙人が、やっつけられてしまうお話。――ありきたりな物語だ。生徒の皆も、内容にこれといって疑問はわき起こらない。ひとりを除いて。
ひとりの男の子が手を挙げた。
「どうしたの――」
とそこまでで、男の子を顔を見たとたん、若い女教師の顔はゆがんだ。
「はい、タダシくん。どうしました?」
ろこつに声の調子を下げる女教師。またかと顔に書いてある。そう、このシーンはいつもくり返される日常のひとコマ。
タダシという男の子は、宇宙人が出てくる話になると決まって同じ疑問を先生にぶつける。
「――どうして、宇宙人は悪いやつばっかりなんですか」
「これはそういう物語なんです」
「じゃあ、じゃあ。どうして宇宙人が降参しているのに、人間は攻撃をやめなかったんですか?」
「それは宇宙人が悪いからです。宇宙人は地球を乗っ取りに来たんですよ。タダシくんも、自分のものがとられたりしたらいやでしょ?」
「でも、ぼくは相手が降参してきたら、許してもいいと思うんです」
「許しても、乗っ取ろうとしたことには変わらないのよ。それに、宇宙人の方から攻撃してきたのですから。それを許すことはできないんです」
タダシと先生の問答は、もはや見慣れた光景だった。
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