328人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
「どうもこうも……心配だったんだぞ」
「心配?」
「俺が変な願い事をしたせいで、お前には悪いことをしたと思ってる……」
「……晃也は全部知っていたのね。私がゲームの世界からきたって言うことも」
「……ああ」
晃也はちゅ、っと軽いキスを唇に落としてから再び私をぎゅっと抱きしめた。
「あの光が……管理者が『この先はリリに選ばせる』と言ったとき、俺はもう、リリがこの世界に帰ってこないんじゃないかと思った。お前は元の世界に戻ってしまうって。だからまさかまたこうして一緒にいられるなんて、信じられないんだ……」
「あら、そうだったの? 私が晃也を選ばないって、そう思ったの?」
少し意地悪にそう返すと、晃也は瞳を切なげに揺らし、かすかに頷く。
(もう! 何なのかしら。私より随分大人の癖に、格好良く見えたり、可愛かったり。本当に見ていて飽きない人――)
だから、私はついその言葉を滑らせてしまった。
「晃也のこと、好きよ」
それが晃也を暴走させてしまうだなんて、思いもしなかったから。
最初のコメントを投稿しよう!