beloved autumm

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──***── その花の名前はもう、聞かれなくたって分かっている。 俺は彼女の好きな花を、彼女の居る部屋へ何度も持ってきていたからだ。 俺は、この部屋の匂いが、雰囲気が嫌いだ。 しかし、彼女に会うにはこの部屋に行くしか方法はなく、俺は我慢しながら彼女の好きな花をその場にあった花瓶へと添える。 薄紫色の花。 「あ、また持ってきてくれたの?ありがとう」 と彼女はまた笑う。優しい眼差しで。 そしてまた話すのだ。他愛のない話を。本当に何気ない話を。彼女と、一緒に。 「ねぇ、質問ね。私の好きな、お花は何でしょう?」 「……。」 俺は黙っていた。俺は何故か声が出なかった。 声の代わりに目から大粒の涙が止まらなくなっていた。 「え?え?ど、どうしたの?大丈夫?」 と、彼女は俺を不安そうに見つめ俺を心配してくれている。 その優しさが俺をいっそう辛くした。
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