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ルーシーの淹れてくれたお茶は、いい香りがしてお世辞抜きで美味しかった。
「ルーシーさん、このお茶どうやって淹れるんですか?」
「気に入ってくれた? うれしいわ! 良かったら茶葉をお分けするわよ」
蒸らし方にちょっとコツがあってね……と、ルーシーは楽しそうにベルに教えた。
「持って帰れば、ベルちゃんのお兄さんにも淹れてあげられるものね」
(おにいちゃん……もう帰っても大丈夫かな)
ベルの不安げな顔を見てルーシーはホゥとため息をついて言った。
「ベルちゃん、本当にお兄さんのこと好きなのね」
ベルは思い切って聞いてみた。
「ルーシーさんは、おにいちゃんのこと……知ってるんですか」
ルーシーは少しだけ驚いたような目をしたがすぐ穏やかな笑顔に戻り、
「知ってるも何も。仲良くさせてもらってたわ。……昔ね」
彼女の口から出た言葉が今度はベルを驚かせた。
「えっ……」
ベルは「やっぱり」と思いつつも、おにいちゃんの秘密を覗いてしまう罪悪感、そして、胸の奥の方で渦巻く不思議な感情……さまざまな思いを同時に抱いた。
でも、勝ったのは一番最後の感情。
「え、えと、『仲良し』っていうのは……どういう意味で……」
「やだー、ベルちゃんたら、おませさんね!」
「ち、違いますっ」
「安心して。色恋沙汰じゃないわ」
「いろこい……?」
意味がわからず首をひねるベルに、ルーシーはクスッと笑った。
「あなたのお兄さんに女といちゃつくような余裕はなかったわ。お兄さんにとってはあなたが一番大事なのよ」
ほんの少しためらいつつルーシーは言った。
「ベルちゃんのお兄さんと私はね、仲間だったの。……敵を倒すために、一緒に戦った」
ルーシーは、ベルをまっすぐ見た。
「ベルちゃん。あなたのお兄さんは、勇者なのよ。今はリハビリ中だから、『元・勇者』ってとこね」
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