第三話 ルーシーの家

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 ルーシーの淹れてくれたお茶は、いい香りがしてお世辞抜きで美味しかった。 「ルーシーさん、このお茶どうやって淹れるんですか?」 「気に入ってくれた? うれしいわ! 良かったら茶葉をお分けするわよ」  蒸らし方にちょっとコツがあってね……と、ルーシーは楽しそうにベルに教えた。 「持って帰れば、ベルちゃんのお兄さんにも淹れてあげられるものね」 (おにいちゃん……もう帰っても大丈夫かな)  ベルの不安げな顔を見てルーシーはホゥとため息をついて言った。 「ベルちゃん、本当にお兄さんのこと好きなのね」  ベルは思い切って聞いてみた。 「ルーシーさんは、おにいちゃんのこと……知ってるんですか」  ルーシーは少しだけ驚いたような目をしたがすぐ穏やかな笑顔に戻り、 「知ってるも何も。仲良くさせてもらってたわ。……昔ね」  彼女の口から出た言葉が今度はベルを驚かせた。 「えっ……」  ベルは「やっぱり」と思いつつも、おにいちゃんの秘密を覗いてしまう罪悪感、そして、胸の奥の方で渦巻く不思議な感情……さまざまな思いを同時に抱いた。  でも、勝ったのは一番最後の感情。 「え、えと、『仲良し』っていうのは……どういう意味で……」 「やだー、ベルちゃんたら、おませさんね!」 「ち、違いますっ」 「安心して。色恋沙汰じゃないわ」 「いろこい……?」  意味がわからず首をひねるベルに、ルーシーはクスッと笑った。 「あなたのお兄さんに女といちゃつくような余裕はなかったわ。お兄さんにとってはあなたが一番大事なのよ」  ほんの少しためらいつつルーシーは言った。 「ベルちゃんのお兄さんと私はね、仲間だったの。……敵を倒すために、一緒に戦った」  ルーシーは、ベルをまっすぐ見た。 「ベルちゃん。あなたのお兄さんは、勇者なのよ。今はリハビリ中だから、『元・勇者』ってとこね」
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