第四話 アディとルーシー

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「く……はっ……」  苦渋に満ちた今際の吐息。ルーシーの美しい口元から一筋、血が流れた。  アディは冷たい眼差しのまま、乱暴に剣を引き抜いた。  傷口から大量の血があふれた。  ルーシーは何か言いたげにアディをまっすぐ見据えたが、その目はすぐに焦点を失い始めた。  痛みに歪んだ表情が弛緩していく。  全身から生気が失われていく……。 (お……にい、ちゃ……、ルーシぃ……さん……)  ベルはまるで自分が刃で貫かれたかのように、気を失いそうだった。  信じられなかった。目の前の光景が。 (どう……して……?)  ベルが気絶する直前、  クス。  何度か聞いたことのある微笑。ベルのすぐそばで聞こえた。そして優しく頭が撫でられた。 「え……えっ!」  ベルは一気に意識を取り戻した。  ルーシーが、ベルを後ろから抱き止めるようにしていた。  彼女の口元には穏やかな笑み。 (え、だって、ルーシーさんは……)  ベルは兄・アディを見た。  兄の剣がぐさりと刺さったその先に、ルーシーがいる…… (あ……れ?)  兄の前で血まみれになっているルーシーの姿は、徐々に薄れ、靄のように溶けていった。
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