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「……こんなに、儲かるものなんだなあ」
また思わずと言った感じで親父が口にした言葉には、やはり、何か愉快でない意図が含まれた感触だった。
……まあ、言いたくなる気持ちはわかるさ。分かるけどよ。
──ならあんたがやるか?
声にはしなかった台詞はしかしきっちり視線には表れてたんだろう。親父は気まずそうに咳払いして視線を逸らす。オレはそれ以上追求しないことにした。
繰り返しになるが、言いたくなる気持ちはわからなくもないのだ。
だからと言って嘲りの視線と言葉を受け続けるつもりもない。ただそれだけで。
「じゃあ、こっちの方はこちらで管理しておくから」
親父がもう半分の貨幣を丁寧にまとめて、勇者の預かり金として必要な手続きを始めていた。
オレは何となくそれが不正もなく行われていることを確認すると──このご時世にそんなことするやつ居るはずもないと思いつつ──もうここに用はないとばかりに立ち上がる。
……自分の革袋に貨幣をまとめて持ち上げると、それなりの重さを感じた。
オレは、この町のエリアを担当する回収屋。
三日以上消息を絶った勇者の行方を捜し、その遺体を回収する役割りだ。
……報酬は、その時勇者が所持していた金額の、半分。
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