前編

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この世界には、およそ数百年に一度、『悪魔』が現れ世界のバランスが不安定になる。 教会の連中は、その、『悪魔』が現れるこの世界の在り様、神の御意思について、聖書に書かれた御神託とやらから一生懸命解釈して御高説述べられているらしいが、要は単に神が世界を創った時の設計ミスじゃねーかとオレは思っている。 そんな、発生すること自体はもうどうしようもない世界の歪みを無理矢理何とかするために、『悪魔』出現の兆候に合わせて神は『勇者』を選ばせる。 ……力ある個人より訓練した兵士たちの方が戦力は上じゃないか? それはその通りだ。 それでも、『悪魔』退治は『勇者』とその一行にすべてを背負わせる。 何故か。 神が与える『勇者』への祝福、その最もたるものと言えるのが『如何なる死にざまからも復活できる』と言うものだからだ。 集団で戦えば、より効率よく『悪魔』退治は出来るかもしれない。 しかしその際に犠牲になった兵士は助けることが出来ない。 ならば、時間がかかっても、兵士たちは各拠点の警備警戒に専念し、『悪魔』については『勇者』たちが倒せるようになるのに任せる方が良い──なにせ彼らは何度でも『失敗』できるのだから──というのが、何周かの『悪魔退治』を経験した人類の結論だ。 かくして人類は今回も、全てを勇者に押し付けてのうのうと暮らすわけである。 そんな言い草ないだろうって? だが。その事実をまざまざと突き付けられるのがオレたち『回収屋』だ。 文句があるなら、回収される『勇者』の、まき散らされた血や××(伏字)、濁った眼球を見てから言ってみろ。何回も。
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