あなたに似た人

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あなたに似た人

 数日後。幸子は悔しさに唇を噛み締めながら晴海通りを歩いていた。  考えまいとしてもどうしても先程歌舞伎座のビルの一室で聞いた話が蘇ってくる。 「十月から高級将校用の慰安施設を開くことになりましてね。今も大森は大繁盛しているんだが、一般兵と将校を分けてほしいというのがアチラさんの言い分で」 そう言うと、髪を七三分けにし、ロイド眼鏡をかけた小太りの男は、値踏みするように幸子を見た。 「小さなお子さんがふたりいて、ご主人は戦死したと、そうですな」 幸子は俯いたままこくりと頷いた。以前自分で仕立てた袖なしの水色のワンピースにレース編みの白いカーディガンを羽織り、絹のストッキングに甲にベルトのある黒の中ヒール。小さな黒のハンドバッグ。今できる最上のおしゃれをしてきた自分が惨めすぎた。こんな話を聞くためならモンペとブラウスでよかったじゃないか。周りを見渡せばそんな姿の若い痩せた女たちが真剣な面持ちで面接を受けている。 「あなたみたいな人がたくさん応募してきているんですって」     
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