spice01.告白

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目の奥が、ジンジンと脈を打ち始める。 は、と息を吐くと、呼吸が一気に肺を圧迫して息苦しくなった。 悲しい。 辛い。 苦しい。 決壊して溢れ出た感情が、全身を覆う。 泣きそうな顔。見破られていた。 喉の奥が詰まったように痛い。 私は、泣くの? 泣くのは私じゃないでしょ。 そう思うのに。 そんな心の内とは反対に、徐々に歪み始める視界。 駄目だ。泣いちゃ駄目。 慌てて視線を下げて、掴まれたままの腕をグイッと引いた。 だけど、彼はビクとも動かないまま、掴んだ腕を離してくれない。 ジリジリと目頭が熱くなって、溜め込んでいる液体がゆらゆらと揺れる。 それをこぼさないように耐えているのに、湧き上がってくるのは泣くのを後押しする感情ばかり。 思い出すな。 考えるな。 何でもない。 悲しくない。 泣きたく、ない――。 「の、にっ……」 意図とは反対に、喉の奥から押し上げてくる何かで、一気に防波堤が崩れ去った。 「うぅっ……うっ……ふぅっ……」 ヒクつく肺が、声を押し上げて、出てくるのは嗚咽。 壊れてしまったら、もう、止まらない。 湧き出す感情が、全身を回って支配する。 講義室なんか行くんじゃなかった。 香恋に恋の相談するんじゃなかった。 春木先輩を好きになるんじゃなかった。 喉の奥が、苦しくて、痛い。 タイミングの悪いもので、今になってやっと、掴まれていた上腕から手が離れていく。 それをなぜか寂しく感じて、余計に涙が溢れた。 「行……か…ない……で……」 嗚咽混じりに思わず吐いていた言葉。 声はほとんど出なかったけど、彼にも聞こえてしまったのか、ポン、と頭に手が乗っかったのがわかった。 トン、と胸の奥が揺れる。 じわじわと彼の手から温度が広がって、涙腺を揺さぶった。 「うぅっ……うぅ……」 心地いい温度。 優しい空気。 もうどうして泣いているのかすらわからないまま、溢れるままに涙を流した。
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