spice01.告白

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ふぅ、と息をついて、閉まりきったドアを見つめる。 静かに動き出すエレベーターに身を任せて、焦りの余韻で大きく脈打つ鼓動の音を聞いた。 見つからずに済んだ。 そう実感していくにつれて、打ち付ける脈が落ち着いていく。 きっと香恋は必死に私を探してくれている。 思わず逃げてしまってごめん。 でも、今は会えない。 会いたくない。 ――ブブーッブブーッブブーッ 「っ……」 スマホの振動音が、静かな空間に反響した。 恐る恐る鞄に手を入れると、予想通り私のスマホが震えている。 わかる。たぶん、香恋からの電話だ。 鞄の中でスマホの画面を見ると、『阿木香恋』という文字。 それを目にした瞬間、やっと落ち着きかけていた鼓動がドクドクと騒ぎ出した。 どうしよう。 出なかったら香恋を不安にさせてしまうけど。でも何を話せばいい? 香恋に何て言えばいい? 考えている間もスマホは震え続けている。 バイブの音が焦燥感を煽ってくる。 ドクドクと脈が嫌な音を立てる。 香恋、ごめん。 今は、ごめん。 香恋と冷静に話せる自信がない私は、震える指で電源ボタンを長押しした。
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