spice01.告白

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香恋からの電波を遮断して、真っ黒に消えた画面を見つめる。 「……いい場所がある」 タイミングを見計らったかのように、低い声が静かに存在感を示した。 彼の存在を思い出してハッと振り返ると、彼はチラリと私を見た後、階を上っていくボタンを見つめる。 その視線をたどって同じくボタンに目を向けると、押されていたのは最上階の七階だった。 「いい、場所……?」 急に不安が押し寄せて、押し出された空気と一緒に声を出す。 七階は確か、研究室と称した空き部屋が並んでいるだけの階だったはず。 学生はもちろん、教授も七階まで行くことはほとんど無い。 そっと横目で彼を見ると、完璧なまでに整った無表情。 無造作な黒髪が目元に影を作っていて、余計に表情が読めない。 そんな姿につい見入っていると、チン、と軽やかな音が七階への到着を告げた。 「降りるぞ」 そう言って私を見た彼と、不意に視線が繋がる。 ドクンと心臓が跳ねて、あ、と思わず声が漏れた。 彼は、そんなこと気にもしてない様子で、開いたドアに視線をやり、先に出るように促す。 羞恥で脈が揺らぐのを感じながら、サッとドアに目を向けてエレベーターから出た。 密閉された空気から解放されて、少し低く感じる温度が皮膚に触れる。 「来て」 いつの間にか私の隣に並んでいた彼が、短くそう呟いて先に歩き出した。 少し不安を感じながらも、言われるままに彼のあとをついていく。
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