spice01.告白

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数秒考えた後、一番無難だと思った文章をゆっくりと画面に打ち込んだ。 『連絡できなくてごめんね。大丈夫。また明日話そう』 これでいいかな、と何度もその文を読み返して、細かく震える息を吐いた。 一瞬息を止めて、送信ボタンを押す。 送り出されたメッセージは、すぐに既読の印がつき、またブブッとスマホが振動した。 『紫映! 生きてて良かった! わかった、また明日ね』 香恋から届いたメッセージは、怒っているでもなく、弁解をしてくるわけでもなく、納得だけの返事。 それを読んで、何とも言い知れない脱力感と安堵に息をついた。 正座していた足を崩して、そっとスマホを鞄に入れ直す。 明日必要になる教科書や資料を鞄に詰め込みながら、明日香恋とどう話そうかと頭を悩ませた。 どんな顔をして会えばいいんだろう。 春木先輩が香恋に告白していた。 そんな場面を見てしまった後で、私は香恋の前で平然とした顔を保ったままでいられるんだろうか。 はぁ、とため息をつくと、オレンジ色に照らされた幻想的な二人の姿が、脳裏をかすめた。 二人は両想いなんだから、もう、私の出る幕はない。 私は、失恋したんだ――。 ゆっくりとその現実を受け止めて、最後の教科書を鞄に入れた。 何も迷うことはない。 中学の時と同じ。 香恋と春木先輩が付き合えるように、後押しすればいいんだ。 親友と好きな人が幸せになる未来を、願えばいい。 中学生の頃一度経験した痛みは、もう麻痺したかのようにそれほど苦しくはない気がした。
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