spice01.告白

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鋭い風が頬に当たるのを感じながら、廊下を一目散に走る。 どこに向かって走ってるのかなんて、わからない。 視界の端にちらりと映った窓が濡れている。 さっきまで綺麗な夕焼けだったのに、雨。 梅雨だもんなぁ。なんて。 走りながら、そんなことを思う心の余裕が、まだ私にはあるらしい。 春木先輩と出会った日は、雲ひとつない晴天で、桜のピンクが空の青によく映えていた。 一年二ヶ月前。 この大学の入学式の日。 サークルを装った宗教勧誘に捕まった、私と香恋を助けてくれた、春木先輩。 その笑顔が、初恋の人とそっくりで。 一瞬で恋に落ちた。 そうして誘われるままに、香恋と天文研究サークルに入って、一年二ヶ月。 サークルで春木先輩と関わるうちに、どんどん気持ちは大きくなって。 自分から話しかける度胸もないくせに、香恋に応援してもらって。 だから、全然気づかなかった。 春木先輩が香恋を好きなことも。 香恋が春木先輩を好きなことも。 何も知らずに、私はのうのうと恋をしていた。 “もしかして紫映、春木先輩のこと好きなの?” “嬉しい! やっと新しい恋に踏み出せたんだね! 応援する!” 私の恋心に気付いて、そう言って嬉しそうに笑った香恋の顔が脳裏に浮かぶ。 香恋は、いつから春木先輩のことが好きになっていたんだろう。 どんな思いをさせてきたんだろう。 ――す、き、です。でも、付き合えません 私のせいで。
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