565人が本棚に入れています
本棚に追加
土曜日に行こうと約束していた、巨大アミューズメントパークだ。大分前から計画を立てていた。顧問をしている部活も休みをもらっていた。部活は顧問は二人いて、外部のコーチも頼んでいるから、交代で休みを取ったりはしている。
「もしかしたら土曜日には具合が良くなってるかもしれないじゃないか」
「そうかしら。前は一週間は痛い痛い言ってたもの」
「そっか、チケットは日付指定だからな……」
土曜日であること、自分も簡単には休めないことを考慮し日付指定にしたのが仇になった。
「日付を変えてもらうか?」
「でもお金取られるんでしょ?」
「少しの金額だろ? ああ、でも誰かもらってくれる奴でも探すか」
「うん、それでいいわよ。ああもう、タイミング悪すぎーっ」
「仕方ないよ、病気や怪我は待ってくれないから」
妻はそうねと言いながらも、ぶつぶつ文句を続けた。
*
「支倉先生、いらっしゃいますか?」
結依の昼休みの日参だ、支倉は笑顔になり顔を上げた。
「おう」
結依がぺこりと頭を下げて入ってくる。
ひと通り勉強が終わると、支倉はスーツの内ポケットから、パークのチケットを取り出した。
「家族で行こうと思ってたんだけど、行けなくなったんだ。よかったらもらってくれないか?」
「そんな──あ、じゃあ、お金、払います」
「いいよ、そんなの。無駄になるのが勿体無いと思っただけだから、タダでやるよ。頑張ってる田浦にご褒美だな」
「でも……」
安物ではない。
「いいって」
そう言って支倉は、それを結依のノートの上に置いた。
「でも……やっぱり他の方にあげてください、私じゃ一緒に行く人もいませんから」
少し考えてみたが、二人きりで行くほど仲のいい友達もいない。二枚あるからと他は折半にしても、とも思ったが、明日では予定も合うかどうか。もらうだけもらって無駄にするのも申し訳ない。
「何言ってるんだ、友達くらいいるだろう?」
何人かと仲良くしている様は知っている、部活の子とも仲は良さそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!