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「でも二人で行くほどでは……」 「ああ、そうか」 納得はできた、恋人でもいれば二人きり、多少無理をしてでも約束をして行けるが、数人の友達グループの一人だけとは行けないし、かと言って全員の予定も合うのか? 納得して思う、喉まで出かかっている言葉があった。 ──じゃあ、俺と行くか? 言いそうになって、内心苦笑する。 (行けるわけがない、誘われたって困るだろう) 結依もまた、言いたかった。 ──一緒に行ってもらえますか? 視線をそらす支倉の顔を見つめてしまう。 (そんなの、先生を困らせるだけだよね……) 家族もいるのに、教え子と二人きりで外出などするはずがない。 でも、思いついた考えはいつまでも消えない。 駄目だ、無理だと判っているのに、何処かで行けるかもしれない妥協点を、内心二人で探し始めていた。 「あの……行けなくなったって、どうしてですか?」 「ああ、嫁さんのお母さんがぎっくり腰になったんで、お世話しに子供と一緒に行っちゃったんだ。市内なんだけどね、泊まりで行ってしまって、さすがに土曜日に遊びには行けないって」 「そ……ですか」 結依は思う。 (奥さまもお子さんもいない──) 支倉も思う。 (黙ってればバレないかも──学校も休みだし……) しばしの沈黙の後、囁く様に言っていた。 「──俺とでよかったら、一緒に行くか?」 先に堰を切ったのは支倉だった。 結依は大きく目を見開いた、支倉が知るJKならば大笑いして「何言ってんの、先生!」くらい言いそうだが。 結依はすぐに頬を真っ赤に染めて、俯くように頷いた。 「先生が……よければ……行きたい、です……」 支倉は全身が熱くなるのを感じた、恥ずかしさなのか、興奮なのか、判らない。 誘いを受け入れてくれた、それだけでも嬉しかった。 「あ、ああ……俺の方こそ、田浦がよければ、だけど……」 結依はこくんと頷く、否定などある訳がない。 支倉はそっとスマホを取り出した、黙ってQRコードの画面を見せると、結依はすぐに意味を理解し自分のものを取り出してそれを読み込んだ。 それからすぐに立ち上がった。 「あのっ、ありがとうございました!」 教科書とノートを同時に閉じながら言った。 「ん、ああ……また判らなかったらどうぞ」 「はいっ、ありがとうございます!」
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