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(何をしてるんだ、俺は)
蓮は、一晩中悩んだ。
(教え子だぞ、未成年だぞ、俺は妻子もある。なのに、好きだと言われて嬉しいなんて)
今までにも生徒から告白を受けた事はある。高校生の彼女達の告白が何処まで本気だったかは判らない。それでも明るく「ありがとな」と言えた。その告白は芸能人に対する愛情表現と変わらないと思ってやり過ごせた。
なのに結依相手となると、全く余裕がなくなる。
(キスなんて……)
何度も思い出した、柔らかいのに張りのある感触だった。それを思い出す度に体が疼きだす。
(いやいや、教え子にないしっ!)
まだ十七歳、大人しそうな立ち振る舞いからも男性経験はないだろう。キスの反応も初心なものだった、戸惑う様子が新鮮で、征服欲を駆り立て──。
(いやいや! 駄目だ、駄目だ! あいつは生徒だ、俺は教師だ! こんな事がバレれば仕事はなくすし、信用もなくすし、家族もなくすぞ!)
それでも一晩中結依のことを考えていた、メッセージを送ろうかとすら思った。しかし文面が思いつかない、ありがとう、はおかしい、また会いたい、とも言えない。
考えすぎて、朝方は夢の中で結依を抱き締めていた程だ。
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