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(もう終わりにしろ、もうあいつに関わるな)
そう思いながらも。
サッカー部の練習を見ているはずなのに、気がつけば美術室を見上げていた。
日曜日の今日は、美術部は活動を行なっていないらしい。部屋は薄暗かった。
*
月曜日は結依のクラスの授業はない。
それでも校内で時折結依の姿を見かけたが、別段普段と変わりない様子だった。
仲がよいらしい数人の女子と笑い合っていた、疑心暗鬼にその話題が自分の事ではと耳を澄ませたが勿論聞こえるはずもない。
しかし結依もその友人達もいつもと態度は変わらなかったので、自分のことを話題にしていた訳ではないと安心する。
むしろ、素っ気なく思える結依の態度にがっかりした程だ。
やはり今までの女生徒と同じか、と。若い教師がかっこいいと言う流れで告白しただけだ。
勝手に舞い上がりキスまでした自分を呪った。同時にそれを嘲笑うような生徒でなかった事は安堵した、このまま何事もなく済ませれば職を失わずに済む。
安堵しつつ、溜息が漏れた。
思わず親指の腹で、唇をなぞった。
まだ、結依の感触を鮮明に思い出せた。
それをもう一度、と思いかけて、結依の連絡先はもう消さなくてはと思った。
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