3.

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「別れるなんて言うな」 「だって、蓮くんだってご家族あるでしょ? 今日だってなんて言って出て来たの? 嘘ついて来たんでしょ? そんなの嫌じゃないの?」 「家族に迷惑はかけてない、結依に逢えなくなる方が嫌だ」 「じゃあ、ご家族に私の事、言える?」 「君はご両親に言えるのか? 現役の教科担任と不倫してるなんて」 言われて結依は視線を漂わせた。 立場としては同じ──お互い公表できない関係である事に変わりはない。 「別れるなんて言うな。俺は結依が好きだ、愛してる。まだまだ傍に居たい」 蓮にしてみれば、結依が直接の教え子で無くなれば、多少罪悪感も薄れると言う思惑があった。これからこそ本当に愛し合う時間なのだと。 「──先生が愛してるのは、ご家族でしょ?」 結依は冷たい口調で言った、もし本当に自分を愛しているなら、とっくに妻と別れていてもいいはずだ。 自分から言い出すつもりはないが、もし蓮が決断してくれたらどんなに嬉しいかと想像したことはある。 「ああ、嫁も、息子も愛してる。でも結依と嫁は別物だな、嫁は同志に近いけど、結依は女として愛してる」 蓮に言われて。 結依は溜息を吐いた、諦めた吐息だ。 嬉しい──蓮に愛してると言われて、結依は本気で喜んでいた。 (馬鹿だ──) 心の中で自分を呪う。 (こんな関係、なにも生み出さないのに──もし公になれば、お互い失うものがあるのに──) それでも求められればこの上なく嬉しかった、今も蓮は結依の体を啄み始めた、好きだ、愛してると言いながら。 「──別れるなんて言うな」 首を噛まれながら言われた。 「俺には結依以外いない──」 「嘘つき……」 結依はすぐに言ったが、言葉は続かなかった。 「本当だよ……結依が好きなんだ……」 耳元で囁かれて、結依は涙が零れた。 この関係はまるで麻薬だ。駄目だと思えば思うほど溺れていく。 もっと蓮が求める女になりとさえ思ってしまう、そんな自分の呪いつつも快楽に負ける。 一度目の別れのチャンスは、こうして逃げて行った。
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