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それに、それが、いつも自分の周りでワイワイ騒いでいるような女子ならともかく。
こちらも恥ずかしくなるほどの初々しい恥じらいをもって対峙されたら。
勝手に体の奥に生じてくる熱を、支倉は懸命にねじ込んだ。
(生徒に……あり得ない)
頭を振り、早足にその場から離れた。
結依もまた。
イーゼルに絵を戻し、自分を抱き締めるように支倉が触れた肩と腰に手を添えていた。
男性に触れられたのは初めてと言っていい、それが支倉であることは嬉しかった。
(……大きな手だった……)
目を閉じてその光景を思い出す。
(あったかい……手だった……)
手だけではない、背中も全て支倉に触れられて、自分の体に支倉の匂いが染み込んだような気持ちにすらなった。
幸福に心が、体が満たされる。
少しの間その場から動けなかった。
*
妻が寝坊してしまうことが度々ある、まだ赤ん坊の夜泣きがあっての事だ。
朝食は簡単なものを用意してくれるが、昼ご飯は適当にお願い、となる。
大抵途中のコンビニで何かを買っていく。
会計の列に並ぶと、ホットドリンクコーナーにあった缶入りの汁粉が目に入った。
実は甘いものに目がない。
食後のデザートに、なんてつもりで購入した。
しかし、いざ昼食後に飲もうとしたら、思いの外冷たくて飲む気にならなかった。
マグカップに出して温めるか……と、コーヒーの入っているマグカップを飲み干そうと口をつけた時、結依の顔が浮かんだ。
『誕生日なんです』
可愛らしい横顔だった、細い肩だった、か弱い腰だった、小さな体だった──。
結依の姿を思い出すと体の芯が熱くなってくるのは、懸命に意識の外に追い出す。
支倉は汁粉の缶を、引き出しにしまっていた。
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