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手のひらを返すようにっていう言葉は、たいてい悪い方に使われますけど、ドテン売り越し、ドテン買い越し、はドライにやるべきだと思うようになりました」
「それによって小さな損を繰り返しても、大きな獲物を捕まえることができるのが、ファンドじゃないか。三丁目さんはそこを指摘したんだと思うよ」
「そうですね、私は今まで、損をしてもお客さんと共同責任だ、という甘えがありました。一人で責任を背負いこむことが怖かったのです」
「だれでもそうだよ。だから客を納得させようとして、政治や経済の話までもちだす。それで裏目が出たらしょうがない、という方がほんとうは無責任なのだよ」
「小口のお客さんが回復不能になってしまう、という例は沢山見てきました」
「ファンドによって、小口の客も救われるし、大口客はさらに儲かる可能性が出てくるだろう」
「大企業の投資信託はファンドが始まりなのに、どうしてあんなに成績が悪いのでしょうか?」
「一つ考えられることは、大きくなり過ぎた事じゃないかな。そのために、幹事を引き受けている電力、ガス、鉄鋼、重電などのような動きの鈍い大型株を入れなくちゃならないし、動きの速い小型株だと大量買いができない。まして、相場が下をむいて走り始めていることが分かっていても、カラ売りに回ることができない。いうなれば、池の中の鯨みたいなもので、前を向いたきり回れ右をすることができないんだ」
「ファンドも、大きくなり過ぎちゃいけないんですね」
「世界中の証券市場に手をのばすなら大きくしてもいいんだが、そのためにはそれぞれの国に専任の調査マンをおいて、その国の政治・経済を敏感に感じとる必要がある。日本だけでやろうと思うなら、当面は百億以内だろうね」
「雪パルの場合なんか、業界紙があれだけ書きたてても、数百万株の成り行き買いでしたから、私の三百三十万株の売りで、値を崩すことがなくて済んだのですが、もし私が六、七百万株抱え込んでいたとしたら、値段が変わっていたかもしれないし、それ以前に市場に売り圧力として意識されていたかもしれない、という不安を感じました。」
「雪パルの相場は、三百万株前後がいいところかもしれないが、もう少し、そうだな、十倍くらいの相場になるものもあるから、当面はファンドの規模を、十億円位と決めておくのもいいんじゃないかな」
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