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「うちの場合、十億の現物で十億から二十億の、信用取引をやらせてもらえるでしょうか？」
「第五証券程度の規模じゃ、十億以上は無理だろう。その場合は他社に注文をだすことだ。ファンドが十億にも増えたら、猪熊君のようにほかに事務所を構えることも考えるんだ」
「十億というのは、私の身の丈に合いません」
「しかし、今度の大当たりで客が客を呼んでくるから、案外早いかもしれないな」
「私のような女セールスじゃ、限度がありますよ」
「いや、君の名前はあっという間に、街中にひろがっているよ。何しろここはシマだからね。山興、野山以下大証券の客まで、君を訪ねてくるかもしれない、客は移り気だからね。ファンドを立ち上げてもう一発当てたら、たちまちのうちに十億だろうな」
「そういうものでしょうか」
「それだけに、ファンドを作っても、次の銘柄はよほど選ばなくちゃね」
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