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「こういう話はむずかしいな、買収がうまく行けばいいけど」
「このシマには、こういう話が時々出てくるんで、離れられないんだ。お前もこっそり買っておくことだ」
猪熊は、自信ありげに胸を反らせた。
「凜子ちゃんは金持ちだけど、あまりたくさん買わないで、まあ、五万株位に止めておいてほしいな」
凜子は顔をあげて、猪熊を直視した。
「関東船舶は、今日、二百五円でしたね?」
「二百円台に上ってきたところだ。今年の最安値は十五円だった」
「十五円というと、倒産必至という値段ですね」
「その船会社が、関東船舶の経営に肩入れしていたんだが、いっそ、子会社にしてしまおう、という事になったんだ」
「TОB(公開買い付け)-をかける予定はないのですか?」
「それには、相当程度株が集まってからだ」
「ああ、そうでした。私、買収に関しては、勉強不足でした。これから研究します」
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