615人が本棚に入れています
本棚に追加
/497ページ
ナダールの言葉に笑みを零したグノーは立ち上がってその額にキスをくれた。
彼からのキスはとても珍しい、けれどそんな子供だましのキスでは納得いかない。
「どうせなら口がいいです」
「ご褒美は何かいい事した時だろ?勝ったらしてやる、って言ったら少しはやる気になるか?」
「勿論です、約束ですよ、絶対ですからね!」
拳を握ったナダールにグノーは呆れたように笑みを零した。
単純だと思われただろうか?でもそのくらい自分にとって彼からのキスはご褒美なのだから仕方がない。
こちらからするのに抵抗される事はないけれど、彼からのキスなんて本当に本当に貴重なのだ。照れ屋なグノーは愛情表現が控え目でもどかしくて仕方がない。
「んふふ、約束な。さぁ、さっさと飯喰っちまえよ、お前が食べなきゃ片付かない」
言ってグノーはキッチンに立って洗い物を始めた。
出会った当初の事を思い出すと、こんな彼の姿など想像も出来なくて自然と笑みが零れる。
毎日家に帰ってきて、彼と共に過せるのは幸せで仕方がない。
少し前までは長期の出張の多い仕事をしていて、こんな姿はなかなか拝めなかったのだ、今はまだ雑務ばかりの仕事だが、転職して良かった、としみじみ思うナダールだった。
最初のコメントを投稿しよう!