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「は?何ソレ?そんなんで役職決めていいのかよ?マジふざけた国だな、お前が国王やってるだけの事はある」
「だが、うちはもうずっとこのシステムでやってきて、今まで大きな問題も起きてない。この大会にもちろんお前の旦那も参加予定で、それで役職決まるから」
「は?聞いてない!」
「今言った」
「大丈夫、大丈夫」とブラックはけらけら笑って「祭り楽しみにしとけ」とそう言った。
「という訳で、旦那の職務改善の話しは以上だ、用がそれだけなら帰れ帰れ」
猫の仔でも追い払うようにそう言われて「あ?!」と怒りを露にすると「なんなら手伝って行くか?」と書類の束に手を置いたブラックににっこり笑って凄まれて、俺は退散する事にした。
まぁ、なんだ…忙しいんだなブラックも。
手伝ってやる気はさらさらないが、邪魔をし続けると切れられそうだ。ブラックはいつも人を喰った笑みで怒る事はあまりないが、一度怒らせると手が付けられない事を経験上知っている俺は踵を返した。
俺の名前はグノー・デルクマン。
デルクマンの姓は旦那の物で、元々姓のなかった俺はなんだか慣れる事ができず、いまだにそれを名乗るのはむずがゆい。
男の俺になんで旦那がいるのかと不思議に思うかもしれないが、俺は男女の性別は男だが、もう一つの性、バース性がΩ(オメガ)なのだ。
世の中には男女の性差の他に三種類の性別が存在する、それがα(アルファ)β(ベータ)Ω(オメガ)の三種類だ。
一般的に普通の人間はβ、これが人類のほとんどを占める、その中で一握り特別な性別を持って生まれるのがαとΩだ。
αは一般的に優れた特殊能力を有する者が多い、だが優秀ゆえにかその生殖能力は非常に低くαは同じαやβとの間に子を成すことができない。
そこで出てくるのがΩという性だ。Ωは生殖に特化した性だ、非常に繁殖力が高く、唯一αとの間に子を成せる。
それは男女の性差は関係なく男の俺でもαの子供は生めるのだ。
俺は『男性Ω』その性を呪って生きた事もあったが、今は旦那と出会い、子を成して幸せに暮らしている。
旦那の名前はナダール・デルクマン、もちろん性別は男性αだ。
少し前まで小さな田舎の村で家族4人仲良く暮らしていたのだが、先程の男、ブラック・ラングに唆されて俺達はこの国ファルスの首都イリヤへと引っ越してきたばかりだ。
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