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『こんな田舎で暮らしてるのは勿体ない、役職付けるからうちの騎士団で働かないか?』
そう言ってブラックは俺達をこの街へと呼んだのだ。
ブラックは正式名称ブラック・ディーン・ファルス、なんとこの国の国王様だ。
ラングの姓は母方の物で偽名だったらしいのだが、そんな偽名を名乗っていた頃に知り合った俺とブラックはなんだかんだと腐れ縁?喧嘩友達?のような仲で、こんな言い合いも日常茶飯事、城の中もフリーパスで闊歩できる程度に仲良くやらせて貰っている。
「あら?ブラックとは話ができた?」
「えぇ、はい、ありがとうございます」
ブラックの妻レネーシャがにっこり笑う。その周りには子供達が遊んでいて、ちょっとした託児所状態だ。
「ルイ、ユリ、帰るぞ」
「え~やだぁ、もっと遊ぶ」
黒髪の子供達の中で、赤毛の娘と金色の髪の息子が顔を上げた。
娘の名前はルイ、息子はユリウス。思いのほか甘えん坊の息子はすぐに俺に駆け寄って来るのだが、娘は自立心旺盛でその場を動こうとしない。
「あら、まだいいじゃない、もう少しゆっくりしていらっしゃいな」
レネーシャにまで言われてしまって、俺は申し訳ないなと思いつつ子供達を見やって促されるまま椅子に腰掛けた。
部屋にはお付の侍女もいて、間髪入れずにお茶が出てくる、何度かお邪魔させて貰っているが、こういうのは本当に慣れない。
「なんだかいつも、すみません」
「いいのよぉ、私もこっちに越して来てから何もやらせて貰えなくなって退屈してるの。子供の頃はこんな生活していたはずなのに、普通の町の生活を10年以上経験しちゃったらもう駄目ね、こんな生活窮屈で仕方がないわ」
彼女はそう言ってころころ笑った。
ブラックの妻レネーシャは元々出自は隣国ランティスで、割と裕福な貴族の出だ。
ある事情で家を出て、同じように城から飛び出し放浪していたブラックと出会い、お互い自分の出自は明かさぬまま10年以上夫婦として小さな町で暮らしていた。
元々ブラックは王族とは言っても妾腹で王になる予定ではなかったらしい、だが彼の兄である前国王が体調を崩し、病気療養を理由に退位したのを受けて急遽国王に任命されてしまったのだという。
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