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「なんで?あいつの封書、破って捨てたはずだろ?」
確かにその場にいた者が全員見たのだ、その中身も間違いなく本物だったはずだ。
「俺達騙された?」
騙したつもりで騙された?あの封書はよく似せた偽物だったのだろうか?それとも、別の挑戦者から奪った封書だった?
疑問ばかりが皆の頭を駆け巡る。
「納得いかねぇ!」
スタールが怒り、それを「まぁまぁ」とナダールが宥める。
「お前も怒れよ!納得いかねぇだろうが!!」
「そうですね、でもあちらの方が私達より更に2枚も3枚も上手だっただけかもしれませんし…」
ナダールがそんな事を言ってスタールを宥める傍らで「どうかしたか?」と先程スタール達と話し込んでいた誘導係の兵士が寄ってきた。
「あいつの封書、本当に本物だったのかよ!?」
「確かに本物だったよ。ちゃんと王印もあったし、中身も間違いなかった」
「くそっ」とスタールは地面を蹴り、グノーは「すまん」と頭を下げた。
「俺がもっとちゃんと仕事ができてれば…」
「まぁまぁ、それでも2位通過ですよ、ちゃんと無事二回戦は通過した訳ですし…」
それでも皆の顔はお通夜のように暗い。
そんな中で大将だけが困ったように笑っている、それもなんだか不思議な光景だ。
「何か納得いかない事でもあるのか?」
「あの人の封書、僕達破って捨てたはずなんです。中身もちゃんと確認して、確かに本物だと思ったのに…」
ハリーは泣きそうな顔で兵士に訴える。
「そうか」と兵士はひとつ頷き、「ちょっと待ってろ、確認してくる」とその場を去って行った。
しばらくすると、先程の兵士が封書の再審議をする事になったと戻って来た。
「再審議?」
「封書は確かに本物なんだがな、どうにも不審な点があるらしい。お前も封書を持って陛下の御前へ行け、その場で再審議が行われる」
「オレ達は?ここで待ってなきゃ駄目?」
「う~ん、まぁ、端の方なら居てもいいんじゃないか?早くしろ!」
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