運命と疑惑

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「確実に勝つ為です。どんな方法を使ってでも私は勝ちたかった、そしてそれができる者が配下にいた。ですから私は手段を選ばなかったのです。もしこの方法が勝負に水を差す結果になっているのならば、大変申し訳なく思います。ですが、圧倒的に人数の少ない私達が勝つ為にはこの方法は間違っていなかったと私は思っております」 「別に責めている訳ではない、それも勝利への布石であったのだろう。それにしても大胆な事を考えるものだ」 ふむふむとリンは一人一人の封書を手に取った。そして「火を持て」と近衛に命を飛ばす。 「実はこの封書には仕掛けがあってな…」 言ってリンがナダールの手紙を火で炙ると、そこにはナダール・デルクマンと自分の名前が浮かび上がってきた。 「これは…」 次にリンはアランの封書を火で炙る。すると今度はアラン・メイズの名が浮かび上がってくる。 最後にリンはクレールの封書を火で炙ったのだが、しかし、そこには何も浮かび上がってはこなかった。 「これはどうした事か?クレール・ロイヤー、説明してもらおうか?」 クレールは下を向いてかたかたと震えていた。 「黙っておっては分からんぞ?」 「偽物だ…」 「ん?」 「偽物にすり替えられたんだ!そこの男、ナダール・デルクマンに私の封書もすり替えられたのだ!!」 クレールはそう叫び、こちらを指差した。 「え?ちょっと待って下さい、私はそんな事しておりませんよ。そもそも私の作った封書はそこまで精巧ではありません、一着二着の方の封書を見ていただければ分かると思いますが、見れば一目で偽物と分かる程度の代物です」 「確かにこれは精巧とは言い難いな」 そう言ってリンが取り出した偽封書には大きく「はずれ」と書かれていて、まるで子供だましのような物だ。 「わっ、私のだけ精巧に作ったのであろう!絶対そうだ!私は何も知らぬ!!」 「そうは言っても、私、あなたの封書を開けて見るまで中に何が書かれているのか、どうなっているのか知らなかったんですよ?そんな精巧は偽物作る時間はありませんでしたよ」
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