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「ふむ」とリンは頷いた。確かに一枚だけ精巧に偽物を作るというのも道理に合わないし、そもそも確認の兵士が本物だと思ってしまうほどの偽物を作る意味も無い。
「何にせよ封書は偽物だったのだから、クレール・ロイヤーお前は失格だ。残念だったな」
言われたクレールは青褪めた。
「納得がいかぬ…」
「ん?なんだ?」
「納得がいきません!何故こいつの偽封書が許されて、私の偽封書は許されないのですか!?おかしいではないですか!やっている事は同じだろ!」
叫ぶクレールに「あ~うるせぇ」と一人の兵士が呟いた。
「なんだお前は!?無礼者が、お前は私を誰だと思っておる!ファルス王国ロイヤー家嫡男、クレール様だぞ!!」
「知ってる知ってる、成金貴族のロイヤー家だろ?そうキーキー叫ぶな、うるさくてかなわない」
言ってその兵士は兜を外し、面倒くさそうにその黒髪を掻いた。
「陛下!!」
リンとナダールはその姿に膝を折る。
「陛下?」
アランとクレールは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で立ち尽くしていた。
「いや~黙って最後まで聞いてようかとも思ったんだが、あんまりこいつがキーキー五月蝿いから、つい本音が漏れちまった。悪い悪い」
ブラックは悪びれた様子もなく笑って、リンが引いた後の玉座にどかっと座り込む。
「で、ロイヤー家の嫡男様がなんだって?」
ブラックは足を組み、ふんぞり返るような傲慢な姿勢で肩肘を肘掛にかけると、彼を小馬鹿にしたように不敵に笑った。
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