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「え?何?何が起こったの?」
キースがスタールに尋ねるも「俺が知るかよ」とスタールも困惑顔だ。
「あれ、今玉座に座ったのが本物の王様だ」
グノーが2人に耳打ちする。
「え?でもあの人、さっきまで俺達と喋ってたじゃん…」
その兵士はどう考えても誘導係として先程から自分達の周りをちょろちょろしていた兵士だと思うのだが、どうにも意味が分からない。
「あいつはそういう奴だから、いちいち驚いてたらキリがない」
「グノーさんは国王陛下を知ってるの?」
「王様になる前にちょっとな。俺はあいつが王族だなんて知らなかったから」
へぇ~と2人はブラックを見やった。
「さて話を聞こうじゃないか、言いたい事があるなら申してみよ、俺は優しい王様だからな、民の陳述はどんな些細な事でも聞いてやるぞ。ん?どうした?」
突然現れたどう見ても王族になど見えないその男に、クレールは何を言っていいのか分からず呆けていた。
「まぁ、お前の言いたい事も分かるがな。この2つの偽封書、この男の物は許されて、自分の物は何故許されないのか、そう言いたいのだろう?」
「こっちの偽封書は本当によく出来ているからなぁ…」とブラックはその封書を指で摘み上げる。
「一目では本物か偽物か分からないくらい精巧だ、これは凄いぞ」
国王陛下に褒められたと思ったクレールは喜色満面顔を上げたのだが、そのブラックの表情を見て凍りつく。
その表情は凍てつくような無表情だ。
「だが、お前は騙す相手を間違えておるわ!主君へ渡す大事な密書を偽物にすり替える配下がどこにおる!!」
「で、ですが…恐れながら陛下、偽物と言っても本物と寸分違わぬ物、密書としての役割は充分…」
それでもクレールは食い下がる。
「密書っていうのはな、中身も勿論重要だが、先程の炙り出しの件も含め本物である事が重要なのだ、中の文章が一言一句同じだとしても、その文書の至る所に暗号が隠されている可能性もある。文字の配置、わざと開けた行間、そんなモノにも意味がある場合がある物だ。それを偽物とすり替えるなど言語道断!この痴れ者が!!」
ブラックに恫喝されクレールは「あわわ」と腰を抜かす。
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