悪の勇者と奴隷の姫騎士 第2章 8

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(この少年が背負う欠点――それは小柄な体格ゆえのリーチの短さにある。今の一撃を完全に再現したとしても、彼の剣が私に届くことはない)  大人と子供。その物理的な体格差が、竜正の進撃に歯止めを掛けているのだ。  ……その現実を彼に突き付けるバルスレイには、ある一つの想いがあった。 (――だが、実戦にそんな言い訳は通用せん。子供だろうが剣を取って戦う以上は立派な戦士だ。その壁を越えられぬ者に、戦場に立つ資格はない。……力無き兵など、あってはならんのだ)  アイラックス将軍の力により膠着状態を保ってはいるものの、国力の差で王国が圧倒的に不利であることには変わりない。  その差を僅かでも埋めるため、今の王国は国民から少年兵を募り、戦争に参加させている。――半人前にも値しない、遊びたい盛りの子供達を。  そうして犠牲になった幼い命を、バルスレイは敵将として幾度となく見てきた。だからこそ彼は、勇者として祭り上げられ、戦争に巻き込まれたこの少年を厳格に指導しているのだ。  せめて……母に会いたいと願う彼の想いが、異世界の戦場に散らぬように――と。  一方、竜正は目の前に突き付けられた難関を前に、再び焦りを募らせていた。  如何に強力なパワーを持っていようと、当たらなければ意味がない。それを当てさせるための「武器」がなければ、前には進めない。     
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