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幼い皇女の叫びが、風に乗って練兵場へ響き渡るのだった。
「こ……皇女殿下!?」
「み、み、見ろ! 皇女殿下がお見えになられているぞ!」
「なぜ皇女殿下がこのような場へ!?」
その声を聞き取った観衆は、この帝国の頂点に近しい存在を目の当たりにし、騒然となる。城の窓から練兵場を見つめるサファイアの瞳は、その喧騒を気にも留めず、倒れ伏した少年に一途な眼差しを注いでいた。
「立って! 立ち上がって! そしていつか、お母様のもとへ……けほっ、一日も、早くっ……!」
病弱な身体を押した反動に苦しめられ、幾度となく咳き込みながらも、彼女は懸命に声を張り上げる。そんな姿を前に、騎士達は慌てて救援を要請し、騒ぎ続けていた。
「何をしているか貴様ら! 早急に皇女殿下を医務室へお連れせぬかッ!」
そして――内心で驚愕しつつも、あくまで冷静に状況を見つめていたバルスレイは騒ぎ立てる騎士達を一喝する。次いで、彼女の叫びから……立場を越えた竜正との繋がりを悟るのだった。
「実績を立てる前から皇女殿下と関わりを持つ、か……。貴殿が勇者でなければ、今頃は不敬罪で首が飛んでいたところだな」
「ぐ、う……フィ、フィオナ……!」
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