892人が本棚に入れています
本棚に追加
悪の勇者と奴隷の姫騎士 第2章 9
「――よくぞ、勇者の資格を勝ち取ってくれたな。タツマサよ。これで余も心置き無く、貴君に『勇者の剣』を授けることができる」
「はい。……ありがとう、ございます。皇帝陛下」
――その夜。
竜正はバルスレイに連れられ、謁見室へ訪れていた。広大な真紅のマットや絢爛な装飾で彩られた謁見室は、静寂に包まれており……この場には皇帝とバルスレイ、竜正の三人しかいない。
玉座の前に立つ皇帝の前に、並んで跪くバルスレイと竜正は、静かに主君の言葉に耳を傾けていた。
「フィオナは貴君を大層気に入っているようでな。……これからも勇者として、あるいは友として、支えになってくれ」
「……皇帝陛下。俺は――」
「わかっておる。戦争が終われば、約束通り元の世界に帰そう。娘の傍に居てくれぬのは心残りであるが、母上のもとへ帰りたいという貴君の願いに背きはせん。――今は、この戦を終わらせ、いたずらに犠牲者を出さないことが先決なのだ」
「……はい」
「療養中のフィオナも、それを望んでいるはず。余は、そう信じておる」
そして――皇帝は装束の懐へ手を伸ばし。古びた包帯で包められた、一振りの剣を掲げた。
最初のコメントを投稿しよう!