悪の勇者と奴隷の姫騎士 第2章 9

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「そのためにも今は、勇者である貴君と――この『勇者の剣』が必要なのだ」 「……これが、勇者の……」  剣を手に、皇帝は玉座から竜正の前へと、静かに足を運ぶ。やがて、勇者である少年の前に――その剣が捧げられた。 「包帯を取るがいい。貴君には、その権利がある」 「……」  「勇者の剣」が纏う、ただならぬオーラ。包帯の上からでもわかる、その威圧を受け――竜正は、言葉を失っていた。  そして、そのまま皇帝の言葉に無言で頷き、彼は剣を取る。……次いで、その感触に、彼はある違和感を覚える。 (なんだ……この形。この国の騎士達が使ってる剣と、全然違う)  「勇者の剣」と聞いて、帝国騎士の剣に近い形状を予想していた竜正にとって――実際に触れた「勇者の剣」のシルエットはあまりにもイメージからかけ離れていたのだ。  ――これは、まるで……。 「……!」  吸い寄せられるように手を伸ばし、包帯を巻き取っていく。彼の脳裏に渦巻く「まさか」という感情は、剣が包帯から露出していく毎に膨れ上がっていく。  そして――黒く塗られた剣の鞘が完全に露わになる時。その「まさか」は、確信に変わった。 「これ、は……」  黒塗りの鞘。微かな曲線を描く刀身。柄巻きを施された木製の柄。  それは、少年がよく知る形だった。     
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