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少年が知る、この鎧が存在していた時代は――彼が生まれ育った時代と比べて、男性の平均身長が著しく低いのだ。
ゆえに、「子供」である竜正が「大人」の鎧を着ることも可能なのである。
(数百年前にここへ召喚された、これの持ち主は――どんな気持ちで戦ってたんだろう。どんな想いで、この剣を取ったんだろう……)
すると。
自分の姿を見下ろして、そう逡巡する彼の首に――赤い巻布が掛けられた。
少年の体躯と比べて、あまりにも長いその巻布は、風に靡いて激しく揺らめいている。この状態で動き回れば、いくら本人が小柄であっても、目立つことは想像に難くない。
「えっ……?」
「――風変わりな格好とはいえ、お前の体格で乱戦状態の戦場へ飛び込めば、こちらはすぐに見失ってしまうだろうからな。士気の要となるお前が見えなくなっては、兵達も不安になろう」
「バルスレイさん……」
「我々は、お前を戦乱の世へと引き摺り込んでしまった。……だが、私はお前を決して独りにはさせん。この赤色が、その誓いの証だ」
「……」
独りにはさせない。その言葉は、この世界に居るただ一人の異世界人である竜正の胸に、深く染み込んでいた。
父を失い、母と離れ離れになり、たった一人でこの世界に迷い込んだ彼にとって――その一言は、何よりも必要な言葉だったのである。
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