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でも、その全てから解放されて、クリアにしてくれるほどの偉大な力を持ったこの空間。
そして、誘われて辿り着いた、至福のまどろみ。
コク…コク…
頭が、横に二回小さく揺れたかと思った瞬間。
コクン。
次の大きな揺れで、
ザブン。
「うわぁっ!」
水面へ落ちる音と共に、聞こえる自分の声。
足音と共に、ドアの向こうから「大丈夫?」と聞こえてくる。
「ごめん、大丈夫」
そう言いながら、現実の世界へ引き戻される。
こうなる事が分かっていても、最後のコクコクさえ気持ちいい。
こんな時間を至福と思えるのは、お風呂という空間の威大さもあるが、先ほど心配してくれた声の主が、寒さに凍えて帰ってくる私のために、この空間を準備してくれた、その気持ちを知っているから……。
こんな日は、いつも言えない感謝の気持ちを込めて、お風呂から上がったら、いきなりハグでもして、彼を驚かせてみようか。
そんな事を思いながら、再びまどろみの世界へ誘われる。
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