番外編ー4

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室長に追い出されるようにオフィスを出て、終礼を知らせる音楽が鳴る頃には、すでにビルの外に立っていた。 南とは、俺の自宅近くの駅で待ち合わせしていたので、そこから電車に乗って向かう。一本乗り換えたが、それでも5時半前には、待ち合わせ場所に着いていた。 最近出来たスタバ以外には、小さなコンビニがあるだけの小さな駅。 改札を抜けると、直ぐに南を発見する事が出来た。南も俺に気づいたので、右手を上げると、以前と変わらない笑顔を見せてくれる。 今年の盆は、急用が出来たとかで、千波のところへは、南が来れなかったから、会うのは約一年ぶり。思ってたより普通でホッとしたが、笑顔は変わらないとはいえ、気のせいか少し痩せたように感じた。 お久しぶりと挨拶した後に、「どうしたの、急に?」と問いかけると、「えっ、あぁー、出張。急に決まってね」と、少し動揺した様子で返してくる。 ジーンズに、薄手のブラウス。小さなバックを持っているものの、どう考えても仕事道具が入っているようには見えず、俺に言わせれば手ぶらも同然。仕事に行くような格好には、到底見えなかったが、そこは敢えて追求しなかった。 お盆に、早希が言っていた事が頭を過ぎる。 南が仕事を辞めたと。 あんなに、自分の仕事に誇りを持って働いていたのに、体の調子でも崩したんじゃないかと、その時は心配になった。どうしても、千波の事があるから、そんな事に敏感に反応してしまう。
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