番外編ー4

4/22
572人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
だが、それを察してか、早希が不妊治療のためだと理由を教えてくれた。口止めされた訳じゃないし、内緒にするつもりもないんだろうけど、自分からは話しやすい話題でもないからと。 俺も、高橋も、早希の意を汲んで、それ以上は何も聞かなかった。 だが、その事はずっと心の奥に残っていて、亡くなって以来、毎年欠かさず来てくれていたのに、千波の家にも顔を出さなかった南のことが、やっぱり心配だった。 早希には、風邪気味だからと言っていたらしいから、変に勘ぐる必要もないのかもしれないとその時は思ったが、こんな風に嘘までついてここに来るなんて、何かあったのかと思う。 「飯でも行く?」 「あっ、うーん」 行くのか行かないのかどちらとも取れるそんな曖昧な返事が、さっぱりとした性格の南らしくないと感じたが、勝手に肯定と捉えて笑顔を返す。 「ごめん。その前に、少し付き合ってくれない?」と聞けば、うんと了承してくれたので、それでよかったんだろう、きっと。 そこから二人で向かったのは、歩いて直ぐのところにある定食屋。 南は、少し不思議そうな顔をしていた。まあ、食事の前に、用があると定食屋に連れてこられれば、それが普通の反応だろう。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!