番外編ー4

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出来るか出来ないかでいえば、出来る。一応、弱小ながら、高校までは野球部だった。千波がいる頃は、公園でそれこそキャッチボールをよくしていた。 運動神経が目立っていい方ではないけど、何にでも興味を持って、負けず嫌いな性格の千波。 俺が持っていた古びたグローブを見て、自分もやりたいと言ってきた。千波用に、小さめのグローブを買ってきて、初めてキャッチボールをしたのは、付き合ってから間もない頃。初めは、本当に下手くそで、どんなに取りやすい玉を投げても、グローブの中に収まらなかった。 呆れるくらい何度もやって、やっているうちにどうにか形になってきて、大学を卒業する頃には、俺のキャッチボールの相手としても、それなりに事足りるようになっていて、その辺を散歩してる人に、経験者ですか?と聞かれることもあった。 ちょっとスッキリしたい事があると、夜でも、公園に誘われて、街頭の下でした事もあったっけと、懐かしく思い出した。 あの時のグローブを、家にまだ持ってはいた。だけど、どこまで自分が踏み入れていいのか分からなかった。 太陽にとって、それだけ思い入れのあることなら、なおのことだ。 今は、たまたま毎日のように来れている。でも、いつ仕事が忙しくなるか分からない。そして、急に来れなくなったときに、太陽に余計淋しい思いをさせるんじゃないかと、裏切られた気分になるんじゃないかと、心配になった。
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