番外編ー4

18/22
前へ
/381ページ
次へ
それから、今日みたいに河川敷に移動して、初めてのキャッチボールをした。 それは、太陽にとってもだけど、俺にとっても初めての経験だった。 子供とするキャッチボール。 もちろん、上手くいくはずなくて、何度やっても、どんなに投げやすい球を投げてもどうしても取れない太陽。 それでも、諦めずに根気強く続けていたけれど、とうとう母親が迎えにくる時間になってしまい、母親の顔を見た途端ベソをかき始めた。 心配そうに近寄って来た母親に、太陽は泣き出すことはせず、必死に涙を堪えながら、もう少しだけ、今日だけだから、待って欲しいと自分で言った。 そんな太陽の姿を見て、母親の方が涙を滲ませていた。 太陽に、初めからグローブは難しいから、素手で取る練習をしないかと提案した。はじめは納得のいかない顔をしていた太陽だったが、ボールを取る練習、投げる練習、グローブを使う練習と、別々にやった方が、早く上手くなるからと説得すると、渋々だが了承した。 自分が思っていたキャッチボールとは違っていて、憧れていたものとの乖離に、はじめはかなり抵抗があったみたいだが、やってみると、素手のキャッチボールも難しくて、そんなこと言ってられない感じだった。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加