学級当番と落とし物

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学級当番と落とし物

 うちの学校には、それぞれのクラスに色んな当番が設けられている。  学級委員とは別にその週のまとめ役が決められ、その下に、具合の悪くなった人を保健室に連れて行く保健当番や、掃除の時、分担の割り振り役をする清掃当番など、様々な役割の当番が設けられている。  当番は男女ペアで一週間ずつ持ち回りなのだが、俺がまとめ役になった今週はやたらと落とし物が多い。  落し物は他に管理する担当がいないので、必然的にまとめ役が届けられた物をまとめ、先生に報告するのだが、ノートを見る限り、先週と比べて五倍くらい増えている。  特に、身につける物の届けが多くて、昨日は誰の物かも判らない靴下と手袋、今日はやっぱり持ち主不明の靴下とイヤ―マフだった。  手袋やイヤ―マフは何となく判るけれど、この季節に、誰がわざわざ靴下を脱いだりしているのだろう。そう首を傾げながら、俺は毎日届く、やたらと数の多い落とし物を先生に渡しまくった。  そして週が変わり、俺は忙しすぎたまとめ役の任を離れた。だが次の役割は保健当番で、風邪引きや、冷えて腹板を訴える者が多いこの時期、次から次へと仕事は生まれる。しかし妙なことに、何故か今週は怪我で保健室に行く者が圧倒的に多いのだ。  膝を深めに擦り剥いた。足首を捻った。突き指をした。などなど、風邪や腹痛という病人より、怪我人の方が圧倒的に数が多い。  その人数にうんざりしていたが、ある瞬間、俺は『その事実』に気づいた。  先週の落とし物と今週の怪我人がリンクしている。  届けられたのが手袋と靴下ならば、手を怪我した人間と足を怪我した人間が、イヤ―マフの時には耳を怪我した人間が、同じ数だけ出現している。  きっとただの偶然だ。でもそう信じ込むには、先週の落とし物数と今週の怪我人の人数、そして落とした品と怪我をした体の部位があまりにも酷似している。  …だがもし俺の推測が当たっていたら、今週の最後である金曜日にはどんな怪我人が出現するのだろう。  先週、金曜日に届けられたのは帽子とイヤ―マフ、メガネ、マスク、そしてマフラーだった。  全部首から上に身につける小物ばかり。  その数だけ、小さな怪我をした怪我人が現れるなら不幸中の幸いだが、一人の人間がそれら総ての部位に関わる怪我をするということなら…それはもう保険当番の仕事じゃなく、救急車の出番だろう。 学級当番と落とし物…完
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