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ようやくバイクにまたがって「じゃあ行こうか」とENAに声をかけた。
ENAはどうしたものかと悩んだ末に、バイクの横からぴょんとタンデムシートに横座りで飛び乗って、その勢いを止めようと一瞬、佳祐にしがみついた。
「あっ」
と、佳祐が声を出してしまい、ENAが「乗るのが下手でごめんなさい」と謝った。
いやいや違うんだ。
今の「あっ」は、そんなことじゃなくて、ENAの……お、おっぱいが背中に当たったからで……。
謝る必要なんて全然なくて、むしろ、とても、嬉しい……。
などという気持ちが顔に出ないよう必死に隠し、佳祐は「じゃあ行くよ」と言ってモーターバイクをスタートさせた。
ENAはあまり引っ付きすぎないよう、両手で佳祐の腰の辺りを掴んでいた。
「もっとしっかりつかまって!」そう言いたかったのだが、それは「僕の背中にもっと胸を押し付けて!」という下心として伝わってしまいそうで……。
だが、ブレーキを踏む度にENAの胸が背中に当たる。
佳祐は必要以上にブレーキを踏みたくなる自分を必死に抑え、ENAが掴んでいる腰の部分とたまに胸が当たる背中に敏感なセンサーが取り付けられてしまったのでは? と思うくらい、そこに神経が集中してしまい、茫然としたままでハイスピード道路を駆け抜けた。
このバイクに自動運転装置が付いていて本当によかった。
そう思った。
都市部を抜けると、道路は少しずつ上り坂になってゆく。
郊外に行くほど地上の建造物が増えるという逆転現象が起こっているのだ。
人工太陽光が、本物の太陽の光に変わった。
アイモニターのグラスに色が付き、すぐに眩しさはおさまったが、今日の地上は晴天でとても暖かい。
道路の横に様々な雑草が見られるようになってきて、しばらくその道を進んで行くと、小さな川が見えてきた。
佳祐のお気に入りの場所だ。
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