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「はい、これ」とハンバーガーを手渡すと、ENAはコーラを二人の間に置き「ありがとうございます」と言って、それを両手で受け取った。
包み紙を開け「では、いただきます」ENAはそう言ったのだが、何故か動きが止まっている。
「どうしたの? 食べないの?」と言いながら、佳祐はハンバーガーにかぶりついた。
ふわふわでジューシーなお肉にマスタードの刺激が加わり、カリッと焼けたベーコンの香ばしい香り、シャキシャキのレタスとクリーミーなマヨネーズ、フレッシュなトマトの酸味とケチャップの甘みが口の中いっぱいに広がって、佳祐は「やっぱり、すっごくおいしい」と微笑んだ。
その顔を見たENAが意を決したように口を開け、ハンバーガーにかぶりつく。
モグモグしながら「ホント、おいしいです」そう言うENAはやっぱりかわいくて。
「あっ」
ENAのかじった断面からケチャップが垂れてきて、胸元に……。
ENAからは顎の向こう側で、そこが見えないようだ。
このままでは真っ白な生地が赤く染まってしまう。
佳祐は、咄嗟に指でケチャップをふき取った。
ENAは何が起こったのかわからず、ビクッとした。
「ほら、ケチャップが」佳祐がそう言って指を見せ、ENAが「どこですか?」と汚れた場所を探すのだが、はやり死角になっているようだ。
すでに、ケチャップが生地に染み込み始めている。
佳祐は「ちょっと待っていて」そう言って、ポケットに入っていたハンカチを取り出して、川の水でそれを濡らした。
「川に落ちないよう気を付けて下さいね」と、ENAに優しい言葉をかけられて、少し嬉しかった。
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