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服の汚れを上から濡れたハンカチで押さえた。
あっ……、柔らかい、なんて柔らかいんだ……。
しかも、柔らかいのに弾力があって……。
それに、ENAに接近したせいか、ほんのり甘い、でも爽やかな香りが漂ってくる。
吐息? 肌の匂い? とにかくそれはずっと嗅いでいたい香りで、佳祐は大きく鼻から息を吸い込んだ、その音が聞こえないようゆっくりと。
生地に吸い込まれた赤いケチャップはなかなか取ることができず、ハンカチの水分が逆にENAの生地に広がっていく。
えっと……、透けて見えているこの線は……、ブラジャーの……。
あぁ、もう……。ここでずっとこうしていたい。
と、そんなことを思っていると「もうそれくらいで……。ありがとうございます。後は帰ってからやります」と言われてしまった……。
ふしだらな気持ちを察知されてしまったのだろうか、それとも、もうこれ以上はと遠慮したのかを知りたかったのだが、もちろん佳祐は尋ねることなどできなかった。
ENAは残ったハンバーガーを紙で丁寧に包み直し「残りは帰ってから頂きますね」そう言って、笑顔を作った。
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