The second episode

8/12
前へ
/122ページ
次へ
 服の汚れを上から濡れたハンカチで押さえた。  あっ……、柔らかい、なんて柔らかいんだ……。  しかも、柔らかいのに弾力があって……。  それに、ENAに接近したせいか、ほんのり甘い、でも爽やかな香りが漂ってくる。  吐息? 肌の匂い? とにかくそれはずっと嗅いでいたい香りで、佳祐は大きく鼻から息を吸い込んだ、その音が聞こえないようゆっくりと。  生地に吸い込まれた赤いケチャップはなかなか取ることができず、ハンカチの水分が逆にENAの生地に広がっていく。  えっと……、透けて見えているこの線は……、ブラジャーの……。  あぁ、もう……。ここでずっとこうしていたい。  と、そんなことを思っていると「もうそれくらいで……。ありがとうございます。後は帰ってからやります」と言われてしまった……。  ふしだらな気持ちを察知されてしまったのだろうか、それとも、もうこれ以上はと遠慮したのかを知りたかったのだが、もちろん佳祐は尋ねることなどできなかった。  ENAは残ったハンバーガーを紙で丁寧に包み直し「残りは帰ってから頂きますね」そう言って、笑顔を作った。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加