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「まぁ、それは気付かれましたよね。男の一方的なスケベ心に女性は敏感ですから。身を守るための女の勘というやつですね。それにもう、他にも間違いだらけだし」
仕事中のような自信溢れる表情をして、優作は佳祐のデートについてダメ出しをした。
反省会と称して、優作と二人、ビアガーデンに飲みに来たのだ。
まだ春である、だが空調の完備された地下ドームは暖かく、丸い天井には満点の星空が、そして月明りを受けた満開の桜が立体モニターに映し出されている。
そこに、アニメなどのキャラクターを忠実に再現したAIがビールを運んできてくれるのだ。
今、一番人気のボーカロイドがこのお店限定のコスチュームを着て「お客様! お任せ致しました!」と抑揚を付けた声でビールを持ってきてくれた。
だが、今の二人にとって、それはとても味気ないものだった。
AMdと比べると、それはもう天と地の差で。
少し前までは二人とも、このボーカロイドが所属するグループに大好きなキャラがいたというのに。
「まず、女性はデートの前の日に、明日何を着て行こうかと、とても迷うのです。そして、行き先を言われなければ、どんな服装でも大丈夫な所に行くのだと判断する。だからちゃんと、どのような所に行くのか、ある程度は教えてあげないと。海に行くのにドレスとハイヒールではおかしいし、高級フレンチにサロペットとスニーカーじゃ、まあ彼女は泣いてしまいますよね」
「そっか……。わかった、ありがとう。けど、どうして女性と付き合った経験のない優作が、そんなことを知っているんだ?」
「まぁ、それは……」
「それに、何を着ようか迷う程、ENAは服を持っていないよ。制服とショートパンツくらいで」
「えっ? 2種類だけ? そんな、それはかわいそうだ。必要な物を買えるように、IDデータの共有はしてあるのですよね?」
「IDデータ? いや、特に何もしていないけど……」
優作は、そりゃ駄目だとばかり大きなため息をついた。
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