The third episode

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 フィッシングランドは波力発電所に付随して作られたレジャー施設で、長さ500mの浜辺を使い、沖合200mまでを網で囲い、その中に様々な魚を放流している、大きな海の釣り堀のようなところだ。  陸の上に緑が増えたため海洋資源も豊富になっているのだが、それ以上に養殖技術が発達し、様々な魚を放流できるようになったのだ。  そこにはレストランやレンタル釣り具店、自分たちで料理をし宿泊もできるバンガローなどが点在している今人気のスポットだ。  天気予報の精度が上がり週間予報はピタリと当たる。  そのため、晴れ予想の日曜日に予約を取ることはとても難しい。  きっと角栄は、必死で頑張ってくれたに違いない。  ENAと初顔合わせとなったリニアトレインの駅では「おいおい佳祐、ENAちゃんかわいすぎやろ」と角栄が耳元でささやいた。  水色のワンピースを着て来た八重は「はじめまして」と小さく頭を下げただけで、何故だか機嫌が悪かった。  重苦しい雰囲気が漂うままリニアトレインのボックス席に座った。  八重は隣の席に座るENAをじっと見つめた後、大きなため息を一つつき、唐突にその口を開いた。 「ところでENAちゃんは、佳祐さんとゆくゆくはご結婚される、わけですよね?」  ENAはすぐさま笑顔を作り、 「いいえ。そうと決まっているわけではありません」そう言って首を大きく横に振った。  八重の唐突な質問にも驚かされたが、ENAの返答に驚いた佳祐は自分に言われたわけでもないのに「えっ? そうなの?」と聞き返してしまった。 「はい。まず佳祐さんが私のことを気に入って下さらなかった場合、返品することができます」 「返品、って……」 「逆に、2年経っても私が佳祐さんのことを好きにならなかった場合は、お暇を頂く、ということになります」 「えっ、たった2年……」佳祐はそう呟いて首を垂れた。  八重は「そっか。じゃあほとんど恋愛と一緒なんだね」そう言うと「じゃあ小腹も空いてきたことだし、ブランチにしましょう!」と朝から作ってきてくれたのであろうサンドイッチを取り出した。  角栄は予想だにしなかった展開に目を白黒させながら「おお! おいしいやんこれ! 八重、料理の天才やな!」とサンドイッチを頬張った。
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