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皆がそれぞれの仕事を終え席に着くと、刺身が盛られた大皿をENAが運んできた。
角の立ったタイのお刺身、キスの薄造り、イカはそうめんのように細く切られ、アジは表面に飾り包丁まで入っていた。
「おーっ」「すごーい」「うまそうやなぁ」
皆の称賛にENAも嬉しそうだ。
それぞれに冷やしたビールやお茶を注ぎ合い乾杯をした。
早速、口に入れた鯛の刺身は、とてもプリプリで上品な脂がのっていて、噛むとほんのりとした甘みが浮かんでくる。
アジもイカも臭みはゼロで、包丁の入れ方が絶妙なのか少し噛むだけで口の中にその旨味がほどけてゆく。
「おいしい……。ENAちゃん、やっぱりすごいなぁ」
「めちゃめちゃうまいやん! これはENAちゃん、ええお嫁さんになるわ」
そんな声にENAは「ありがとうございます!」と満面の笑みで応え「じゃあ次のお料理を」と言ってキッチンに戻っていった。
次にENAが自信満々で持ってきた四川風海鮮炒めは、イカやアサリがたっぷりと入っていて、豆板醤の香りが鼻を刺激し、それはもうおいしそうで。
だが、一口目で、その辛さが脳天まで突き抜けて、額から汗が噴き出てきて、皆すぐさまご飯をかき込み、お味噌汁でなんとか口をごまかした。
最後に出てきたタイの煮つけは味付けが薄すぎて、八重が「上品な味ですね」となんとか庇ってくれたのだが、ENAは皆の雰囲気を感じ取り、下を向いてしまった。
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