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「おいしくなかった、ですよね……。ごめんなさい、せっかく皆さんが釣ってくれたものなのに。本場の……、四川の味や、京都の老舗料亭の調味料の分量で味付けをしたのですが……」
悲しそうなENAの顔。
見ていられない。
何とかしないと……。
そう佳祐が思ていると「そうなんや……。ほんなら、俺らとはちょっと好みが違うかっただけなんやで。刺身はすごいうまかったし。よう頑張ってくれた。ありがとうな」と角栄が慰めてくれた。
確かにその土地によって味の好みは大幅に違う。
しかも、同じ量でも調味料自体、物によって味が異なる。
きっとデータだけでは上手くいかないこともあるのだろう。
もしかするとそれは料理に限らず、ENAにも「経験」というものが必要なのかもしれない。
落ち込む彼女を見た佳祐は、これからENAにいろんな経験をさせてやりたい、そう思った。
だがその日、佳祐を一番驚かせたのは、帰りのリニアトレインで角栄がつぶやいた一言だった。
「実は俺、おととい27歳の誕生日やってんけど、AMd、来えへんかってん……」
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