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「なんであんなに簡単に脱獄が出来たの?」
六人以外の奴が口を開いた。バカバカしい質問をしてきやがる。もう終わった事の話をして何になるんだろう。
「サマリヤ国に着いたらさっそく準備するからな。それまでにここ二〇年の事をしっかりと教えてくれよ」
俺はこいつの質問を無視し、六人の奴らにだけ話を掛けた。
「ねぇねぇ。どうやって脱獄したの?」
こいつは無視された事に気が付いていないのか?本当にうっとうしい。
「俺が刑務官達の脳に命令しただけ。はい。過去の話はもう終わり」
俺は睨みつけるように言った。
「どういう事?脳に命令って無理じゃない?」
無理だったら脱獄出来てないだろう。もう済んだ話なんだ。後で自分で調べれば良いだろう。なぜいちいち人に聞く?
「俺という人間を操っているのは脳。だから脳を操作する事が出来れば、人間を操るのは簡単なの。俺たちは、自分自身が考えて動いているわけでは無い。脳に命令されて動いているだけだから」
「えぇ?よく分からないけど?」首をかしげてまだまだ聞いてくる。
「国に例えよう。国を構成しているのは人間。そして人間が国をどうするか決めている。つまり、国自身には意思が無いって事」
「えぇ?まだ分からないけど?」
食い下がらない奴だ。こいつは度胸があるな。俺にビビらず、平気でこんな下らない質問が出来るなんて。
「お前の名前は?」
「俺?俺はユダ」
「裏切りそうな名前だな」
「なんで?」
面白そうだな。こいつも仲間に入れようか。
そう思った時だ。
空が光った。
あの光には見覚えがある。悪魔の光。その名前はサタン。
その兵器は名前の通り恐ろしい。二〇〇〇年前、こいつで文明が滅んだ。今の世界でもこいつが発明されていたのか。多分、ムートンが作ったのであろう。
サタンは、俺達がいた山とその周りの町を一瞬で消した。
多分、俺は死んだ。真っ暗だが意識はある。
声が聞こえた。
「何も残っていません。町がすべて滅びました」
「そうか。ご苦労であった」
会話が聞こえる。しかし気配は一人分しか確認出来ない。ここには一人しかいないのであろう。
「町の外で囚人は見つかったか」
「いえ、一人も見つかりませんでした。脱獄した囚人は全員、町から出ていなかったと思われます」
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