第1話 496

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「なんであんなに簡単に脱獄が出来たの?」  六人以外の奴が口を開いた。バカバカしい質問をしてきやがる。もう終わった事の話をして何になるんだろう。 「サマリヤ国に着いたらさっそく準備するからな。それまでにここ二〇年の事をしっかりと教えてくれよ」  俺はこいつの質問を無視し、六人の奴らにだけ話を掛けた。  「ねぇねぇ。どうやって脱獄したの?」  こいつは無視された事に気が付いていないのか?本当にうっとうしい。 「俺が刑務官達の脳に命令しただけ。はい。過去の話はもう終わり」  俺は睨みつけるように言った。 「どういう事?脳に命令って無理じゃない?」  無理だったら脱獄出来てないだろう。もう済んだ話なんだ。後で自分で調べれば良いだろう。なぜいちいち人に聞く? 「俺という人間を操っているのは脳。だから脳を操作する事が出来れば、人間を操るのは簡単なの。俺たちは、自分自身が考えて動いているわけでは無い。脳に命令されて動いているだけだから」 「えぇ?よく分からないけど?」首をかしげてまだまだ聞いてくる。 「国に例えよう。国を構成しているのは人間。そして人間が国をどうするか決めている。つまり、国自身には意思が無いって事」 「えぇ?まだ分からないけど?」  食い下がらない奴だ。こいつは度胸があるな。俺にビビらず、平気でこんな下らない質問が出来るなんて。 「お前の名前は?」 「俺?俺はユダ」 「裏切りそうな名前だな」 「なんで?」  面白そうだな。こいつも仲間に入れようか。  そう思った時だ。  空が光った。  あの光には見覚えがある。悪魔の光。その名前はサタン。  その兵器は名前の通り恐ろしい。二〇〇〇年前、こいつで文明が滅んだ。今の世界でもこいつが発明されていたのか。多分、ムートンが作ったのであろう。  サタンは、俺達がいた山とその周りの町を一瞬で消した。  多分、俺は死んだ。真っ暗だが意識はある。  声が聞こえた。 「何も残っていません。町がすべて滅びました」 「そうか。ご苦労であった」  会話が聞こえる。しかし気配は一人分しか確認出来ない。ここには一人しかいないのであろう。 「町の外で囚人は見つかったか」 「いえ、一人も見つかりませんでした。脱獄した囚人は全員、町から出ていなかったと思われます」
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