1人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
今の俺の状況は最悪だ。これは今までに何回か体験している。
俺は死んだ。
正確に言うと、肉体と心が分解された。
まぁ良い。怪我の功名ってやつだ。このサイズまで分解されたら、肉の塊に心を入れるのは簡単だ。
「サタンを使うとはひどい奴だな。実の兄に向かってよ」
兵隊の体を借り、ここにはいない人間に話を掛けた。
懐かしい声が聞こえてきた。
「シープ兄さんか。久しぶりだね。サタンじゃ心までは分解できないもんね」笑った口調で続けた。「でも僕は完成させたんだよね。心を分解する装置を…」
「それは不可能だろう?最小の無限を俺らは痛いぐらいに知っている」
そう。完全に分解することは不可能だ。つまり、人間の力では「有」を「無」にすることは出来ない。逆もしかりだ。
「シープ兄さん、ごめんね。虹が見たかったら雨を我慢しなきゃいけないから」
俺の意識が無くなった。睡眠に似ているが違う。これは初めての体験だ。
最初のコメントを投稿しよう!