第1話 496

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 今の俺の状況は最悪だ。これは今までに何回か体験している。  俺は死んだ。  正確に言うと、肉体と心が分解された。  まぁ良い。怪我の功名ってやつだ。このサイズまで分解されたら、肉の塊に心を入れるのは簡単だ。 「サタンを使うとはひどい奴だな。実の兄に向かってよ」  兵隊の体を借り、ここにはいない人間に話を掛けた。  懐かしい声が聞こえてきた。 「シープ兄さんか。久しぶりだね。サタンじゃ心までは分解できないもんね」笑った口調で続けた。「でも僕は完成させたんだよね。心を分解する装置を…」 「それは不可能だろう?最小の無限を俺らは痛いぐらいに知っている」  そう。完全に分解することは不可能だ。つまり、人間の力では「有」を「無」にすることは出来ない。逆もしかりだ。 「シープ兄さん、ごめんね。虹が見たかったら雨を我慢しなきゃいけないから」  俺の意識が無くなった。睡眠に似ているが違う。これは初めての体験だ。
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