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「え?」 「あの車、私のものなんです」  俺はまた目を瞬かせた。一体何がどうなっているのだろう。 「妹は気分屋で我儘で。私の車も勝手に使って、よく東京に行ってました」  こめかみに手を当てながら、呆れたため息を落とした。  お姉さんも、妹さんには相当困っていた様子だ。 「妹の部屋から、青切符と、切符を切った振込用紙が発見されて、貴方の名前を見て、ここへやってきたんです」  なるほど。そういう事か。お姉さんは色々手がかりを求めて、わざわざ信州から、松本へ来たのか。  遠いのに、ご苦労な話だ。 「それは、お疲れ様です」  俺はついつい頭を下げてしまった。お姉さんが、気の毒に思えた。 「あの子、よからぬ事をしていたのは知っていたんですけどね。男の人から、お金貰って」  苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる、お姉さん。
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